ayasui 切絵展 「氷裏」 取材レポート

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第1話 ayasui 的 切絵概論その1

◎またお目にかかれて光栄である

第1話の冒頭から再会の挨拶で始まることに、察しをつけてくれる方がいれば至極光栄だ。
ワタシはayasuiの前個展、「にごり水」において、個展紹介のレポート連載を仰せつかった。

前連載の最終項に、にごり水の話を交えつつ、またいつか話したいと述べ文章を結んだ。しかしそれは社交辞令。 よもやその1年後、本当にレポートを届けることになるとは夢想だにしていなかった・・・。
閑話休題である。ワタシの話題は辞めて早速本題へ移ろう。本文は1月19日より開始する切絵展「氷裏」を紹介するための文章である。
前回のにごり水展同様、展示作品自体の描写は避けつつ、その周辺の情報をお届けしようと考えている。

◎切絵の魅力について考えてみる

皆様は『切絵』と聞きくとどんなイメージを描くだろうか。黒い影絵のような絵をイメージするだろうか?
はたまた軽妙な話術と共に、観客の前で紙を切る方であろうか?(そもそも馴染みがない方も多いことだろう)

あらかじめお断りしておくが、ワタシはそれらの切絵と、これから話すayasui切絵に優越をつけるつもりはない。今述べた2つの切絵はそれぞれが伝統ある優れた表現方法であると考えている。
だが、ayasuiの切絵はそれらの表現方法とはいくぶん異なる点がある。その点を紹介しようと思う。
これは、優れているという推挙ではなく、ひとつのスタイルの列挙なのである。

◎ayasuiの切絵 −素材の表情−

ひと作品ごとに、幾種類もの風合いの異なる紙が使用されており、素材の持っている質感が折り重なりあう。
艶のある表面から、ザラザラとした質感まで、モチーフに合わせ巧みに使い分けられている。
様々な質感が混ざりあって構成される、異質な非日常の世界。
間近にせまる紙の表情を堪能されるのも、ayasui作品の楽しみ方のひとつであろう。

◎ayasuiの切絵 −異素材との融合−

紙の持つ表情を巧みに操り創りあげられた世界は、さらに幾多もの『試み』により、一枚の絵となっていく。

冒頭に掲げた写真のように、ろうそくと灯籠の切絵のコラボレーションを施すこともある。はたまた、モチーフは砂上に置かれることもある。

敷き詰められた白い砂の上に置かれたモチーフ。波状の紋様が作品の存在感を引き立てている。

作家曰く、思い描いた世界を表現するためにならば、使える手法や素材はこだわりなく取り入れるという。このある種ストイックで、柔軟な姿勢が、既成概念にとらわれない、自由奔放な彼女の作風を支えているのであろう。

先日、会場に陳列するポストカード用の作品を撮影している時にもその一端を垣間見ることができた。
花々の切絵を散らした作品をセッティングしていたayasui。
「ここにパール散らしたら素敵ですね」
と言い終わるや否や、
切絵周辺に大小様々なパールを散らすayasui。
並べ終わるや否や、
「あ、これは違いますね」
と即座に撤収するayasui。

審美を瞬時に施す鋭さにより、幻と消える情景も存在する。

次回 第二話 ayasui 的 切絵概論その2 へつづく



(文 河内製作所:佐藤 大陸)

※蛇足※
前回「にごり水展レポート」は
こちらからご確認いただけます。
「にごり水展レポート」
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「氷裏」会場のご案内

下北沢ハーフムーンホール 〒155-0031
東京都世田谷区北沢4-10-4
TEL:03-6423-1126
URL:http://www.halfmoonhall.com/