ayasui 切絵展 「氷裏」 取材レポート
第2話 ayasui 的 切絵概論その2
◎『世界』を彩る色
先週のレポートにて、ayasui切絵の魅力は紙の持つ表情に あると述べた。今回はさらにもうひとつの特徴について話をしたいと思う。
◎ayasuiの切絵 -色彩の物語-
紙の質感、異素材との融合とならび、ayasuiの作風には、『色彩』という特徴が挙げられる。
遠目からでも飛び込んでくる鮮烈な紅(あか)。
深い闇の様な静謐さを湛える荘厳な碧(あお)。
モチーフや素材に与えられる色の表現によって、作品に込められた心情や主題は、より濃密に強く、観る者へと迫る力を帯びるのだ。
(少なくともワタシの中では)黒一色のイメージが強い、切絵において、その色調による表現は、まさに『異彩』を放っている。
◎はじめての切絵 ー色味への初期衝動ー
ワタシは以前、撮影の合間にayasuiへ初期作品を制作した頃について質問したことがある。
初期の制作は切絵という意識はなく、紙遊びからはじまった。用いられた素材の多くは、折り紙であったという。
ayasui初期作品。向かい合う少年が、手のひらサイズの折り紙で切り撮られている。
作家自身切絵に対するイメージは『黒』であったというが、自身では制作当初から色味のある紙を使ったそうだ。カエル(カエルは初期の頃から好んで用いている)の目を何色にしようかと折り紙をやりくりしていく、作業が楽しかったと語るayasui。
色味のある世界はこの頃から続く作風なのである。
◎ちかごろの切絵 ー色調の進化論ー
初期作品の向かい合う少年は、単色の折り紙である。その色は現在に通じる、淡く沈んだ色。初期の頃からビビッドな原色を好まず、くすんだような濁りのある色調を好んで用いた。
『黒』という色も初期のころには全く使用せず、独自の色彩感覚で作品を生み出すうちに、色調の領域は広がり、冒頭で述べた通り色自体が作品の主題を物語る存在へと変化していった。
現在は、強い色味や黒に対しても積極的に挑戦しておりその色調は冒頭の華にみられるような、繊細で日本古来の伝統色に織り込まれる力強さにも表れている。
◎色味は広がりやがて氷裏へとつらなる
これまでに述べた要素によって構成されるayasuiの切絵。作り続けた作品の発表をつづける傍ら、昨年末から自身の作品をもとに切絵ワークショップの講師にも挑戦をはじめた。
ayasuiワークショップの様子。広がっている色彩豊かに紙が散乱している。
参加者の多くは、切絵に初めて触れる方が多いという。最初は苦戦することもあるというが、しばらくすると皆、モチーフのどこにどんな色を使うかと思考しながら、紙と向き合う。
講座の中では主にカッターを使用する(ayasui自身は初期は主にハサミを使用していたが表現の幅を広げるためカッターを使用するようになる)。
一枚の紙から形を作り出すことへ集中する。
やがて、浮かび上がってきた作品を眺める参加者は、清々しい表情になるそうだ。
・・・、唐突にワークショップの話題を持ち出してしまったが、これには訳がある。
今回の氷裏展を語るうえで、重要なことなのだ。
鍵はこのワークショップの主催者が握っている・・・・・・。
(文 河内製作所:佐藤 大陸) ※蛇足※
前回「にごり水展レポート」は
こちらからご確認いただけます。
「にごり水展レポート」
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