ayasui 切絵展 「氷裏」 取材レポート
最終話 千秋楽
◎最終回にあたって
ついに今回のコラムを持って、氷裏事前レポートは終了となる。正確にいえば『事前』レポートはすでに終了しているというのが正しい表現だ。
なぜなら、氷裏はすでに始まっているからである。
去る1月19日下北沢ハーフムーンホールに於いて、無事に幕を開けた。
したがって今回のレポートは事前ではなく、陣中レポートとしてお送りしようと思う。
◎幕開けは静かに訪れた
1月19日 早朝。ワタシは、下北沢駅北口を出て会場へ、到着した。会場の扉を開けるとayasuiはすでにソファへ腰をおろしていた。挨拶を交した眼差しには、開幕への期待が見て取れた。
異国情緒のあるこの部屋が、氷裏の舞台となるのだ。部屋に着くやおもむろに準備がはじまる。
陳列されるポストカードたち。
微調整を経て、壁面へと掲げられる作品たち。
ひとつまた、ひとつと灯される照明たち。
着実に、アヤスイ切絵展『氷裏』の息吹が聞こえ始めた。
そして。最後の照明が灯される。
こうして1月19日午前11時。氷裏は幕を開けた。
◎ayasuiの部屋
大変にありがたいことに、来場者は途切れることなく、
展示を行う部屋を訪れる。
しかし、2日目の午後は、比較的ゆったりとした時間があった。
切絵だけがある静かな空間でayasuiと話す機会は、稀有なものであろう。折角の機会である、ワタシは、ayasuiに開催後の心境を聞いてみた。
『ayasuiの部屋』に佇む。作品はたちは静かに時を過ごしている
ayasuiは自分の作品を順繰りに見ながらぽつりと
「私の部屋のようになってきましたね」といって笑った。
ー確かに今回は日常に溶け込む展示ですねー
ワタシの問いかけにアヤスイは、頷き話し出す。
「今回の展示は、舞台と切絵をやってきた自分ならではの会であると思います。どちらのお客様の気持ちもわかるから、どちらのお客様にとっても素敵な時間になるような展示にしたいと思います」
と静かな空間で彼女は語った。
◎氷はやがてとけて流れ出す
川上氏の舞台『氷裏』も立見の出る盛況のようだ。
観劇に訪れたお客様も開演前後にお好みの時間を使いayasuiの作品をご覧いただいている。今回の氷裏をきっかけとして初めて切絵に触れたという方も多い。
ayasuiのワークショップをきっかけとして来場された方々も、
数多くいらっしゃる。
もちろん、以前からayasui作品をご覧いただいているお客様も。
ayasuiの話を聞きながら、作品を鑑賞する方、
目に止まる作品を自由に眺める方、ソファでくつろぎながら、作品を眺める方々。
皆、『ayasuiの部屋』で思い思いに作品を楽しまれていた。
全く異なるジャンルの方から、新たな形の作品づくりの話を伺う機会にも恵まれたとayasuiが語ったのを聞きワタシは思う。
氷裏は訪れた皆様にとって、新たな刺激を感じる場であったのと同時に作家ayasuiにとっても新境地へと旅立つ分岐点であったのではないかと。
氷はとけ、せせらぎとなり、やがて大海へと流れ行く。
この出会いは、どこへ流れ行くのか。
行く先へと思いを馳せながら、今回はここで筆を置こう。
皆様とはまたそこでお会いしたい。
大きな流れのその先で。
氷裏 事前レポート
了
(文 河内製作所:佐藤 大陸)
前回「にごり水展レポート」は
こちらからご確認いただけます。
「にごり水展レポート」
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「氷裏」会場のご案内
下北沢ハーフムーンホール
〒155-0031
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TEL:03-6423-1126
URL:http://www.halfmoonhall.com/