ayasui 切絵展 「氷裏」 取材レポート
第3話 『氷裏』開催者の話
◎もうひとつの氷裏
3話目にして恐縮であるが、ワタシが氷裏について語るのであれば、伝えておかねばならないことがある。
冒頭の画像は、ayasuiの作品ではない。
もうひとつの『氷裏』の広報用写真だ。今回のayasui切絵展『氷裏』とは別にもうひとつ『氷裏』が開催される。
いや。
もうひとつというのは適切ではない。どちらかといえば、そちらの氷裏が本来の氷裏なのだ。今回のレポートは、ayasui切絵展『氷裏』の由来をご紹介したいと思う。
◎『氷裏』を創った男
前回のレポートにおいてayasuiのワークショップに、氷裏のキーマンがいると話した。
ワークショップの主催者 川上 一輝氏である。
今回の展示は、川上氏が作・演出を手がける舞台『氷裏』と同時開催なのだ。
作品ごとにキャストやスタッフを集結し創作を行うというスタイルで活動する氏の最新作。
それが本来の『氷裏』。
ここが『氷裏』開催場所
詳細「nooncallstudio」
(webサイトへ移動)
川上氏は自身も俳優として活動を行い、舞台の創作も手がけ、さらには演技やダンスなど様々なワークショップを主宰する。
ある短編映画での共演を通じてayasuiと知り合ったことがきっかけとなり、氏のワークショップには切絵が加わり、ayasuiは講師へ挑戦することとなった。
◎川上氏 切絵にふれる
はじめの数回は主催者として、見学していただけの川上氏やがては、好奇心に駆られ切絵講座へ参加することになる。
後で聞けば「参加者がおもしろいといっているのをみて、参加してみたくなった」そうだ。はじめのうちは、おどけたように、
「すっげー楽しい、うわっ、これすっげ楽しい」とはしゃいでいたが、気づけば紙と向き合う表情は真剣に。
ひとつの作品を夢中で作り上げた。
切絵に没頭する川上氏。真剣な表情が窺い知れる。
完成した作品をみて閃いたのかはたまた思いつきであったのかは、本人のみぞ知るところだが、ayasuiへ、ひとつの提案を持ちかける。
「次の舞台の時に切絵の展示も一緒にやりませんか」と。
作品を眺める川上氏。表情からは達成感が窺い知れる。
◎同じ命題を選んだ理由
こうした縁で今回の『氷裏』開催の運びとなる。だが、ワタシにはひとつ気になることがあった。展示タイトルはなぜ氷裏としたのだろう。
舞台とは別のものとすることもできたはずなのに。その理由をayasuiに聞いてみた。彼女は訥々と語る。「氷の裏という言葉にはじめは、寂しくて冷たい風景が浮かびました。でも考えていくうちに、氷がとけていくイメージにかわりました」
ひと呼吸した表情は少し遠くをみつめていた。おそらく雄大な氷の世界を思い浮かべているのではないか。
「その氷はやがて海と一体になって漂うんです。それが自分の心の中に、残っている過去の記憶や秘密が自分の一部になっていくような、わだかまりが浄化されていく気持ちのように思えたのです」
氷の世界から現実へ戻ったayasuiはまっすぐにワタシをみていった。
「だから私も、氷裏にしようとおもいました」
こうして『氷裏』は2つの意味をもつ言葉となった。
川上氏の氷裏。
ayasuiの氷裏。
ワタシはふたつの氷裏の間に不思議な縁を感じたのである。
(文 河内製作所:佐藤 大陸) ※蛇足※
前回「にごり水展レポート」は
こちらからご確認いただけます。
「にごり水展レポート」
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